「有機の光」で青森から世界を照らす
青森県下北半島、六ヶ所村。豊かな自然とエネルギー関連施設が共存するこの地に、世界最先端のあかりを操る企業がOLED青森株式会社だ。同社が手がけるのは「OLED(有機EL)」と呼ばれる次世代の光源。技術者としての誇りと経営者としての覚悟を併せ持つ福留と創業期から同社を支える社員にその革新の軌跡と未来への展望を語ってもらった。
「点」ではなく「面」で包み込む。人肌のようなやさしさを持つ光
「そもそも、LEDとOLEDの違いをご存知ですか?」福留は手元のパネルを愛おしそうに撫でながら問いかけた。
「LEDは『点』で光ります。対してOLEDは『面』で光る。そして何より、OLEDの『O』はOrganic(有機)を意味します。
福留が強調するのは、その光の「質」だ。従来のLED照明は輝度が高く効率的だが、直進性が強いために個人差はあるものの人によっては光害(突き刺さるような眩しさなど)を感じさせることがある。一方でOLEDの光はやさしく、影を作りづらい。
「我々が目指しているのは、ただ明るくするだけの照明ではありません。家庭であれば家族が安らげる空間、工場であれば働く人がリラックスできる休憩室。そうした『やさしさ』や『癒やし』を提供できる光を作りたいのです」
実際に同社のパネルが設置された空間に身を置くと、光に「包まれている」という感覚を覚える。それは単なる物理的な明るさではなく、心理的な温かさをもたらす光だ。近年、ブルーライトの問題や光害が叫ばれる中、同社の「目にやさしい光」は健康経営やQOL(生活の質)の向上という文脈でも注目を集めている。
災害に強く、精密加工に適した「約束の地」六ヶ所村
なぜ、青森の六ヶ所村なのか。事業継承した有機EL製造会社が六ヶ所村だったということもあるが、六ヶ所村は地盤が強固であり、台風や地震といった自然災害の影響を受けにくいという。
「精密機器の製造において、揺れや振動は命取りになります。その点、この地域は過去のデータを見ても非常に安定しており、安心して操業を続けられる。これはメーカーとして最大の強みです」
さらに、北国の冷涼な気候と清浄な空気、豊富な水資源も、熱を持ちやすい製造装置の冷却や洗浄工程において大きなメリットとなる。青森という地は、単なる地方拠点ではなく、世界最高品質のパネルを生み出すための「必然の選択」だった。
技術者から経営者へ。組織の壁を壊した「自分ごと」化の改革
OLED青森の起源は約15年前に遡る。「着任当時は、とにかく『良いモノを作ればいい』という職人気質が強かったですね。上から言われた仕様通りに、完璧な製品を作る。それが仕事だと思っていました」と福留は振り返る。しかし、開発から製造、そして経営へと立場が変わるにつれ、その考えは大きく変化していく。
「技術力だけでは会社は回らない。大切なのは『人』です。しかし、当時の組織には見えない壁がありました」。製造、品質保証、営業。それぞれの部署が縦割りになり、互いの業務に無関心になりがちだった。「これではいけないと思いました。社員一人ひとりが、会社の課題を『自分ごと』として捉え、自ら考え動く組織にしなければならない」
そこで福留が導入したのが、ある会社に倣った徹底的な改善活動と人材育成だ。外部から講師を招き、座学だけでなく実践的な問題解決のプロセスを叩き込んだ。さらに、部署間のローテーションを大胆に行い、互いの苦労や立場を理解させる仕組みを作った。
「最初は戸惑いもありました。今まで『言われた通りにやる』ことが正解だった社員たちに『自分で考えて改善しろ』と言うわけですから」
しかし、粘り強い対話と教育は徐々に実を結び始め「最近では、若手社員が自発的に改善チームを作り、部門を超えて課題解決に取り組む姿が見られるようになりました。彼らの成長こそが、今の私の一番の喜びです」
かつての「指示待ち」の工場は、今や「自走する」イノベーション集団へと変貌を遂げつつある。
青森を元気にしたい。光が繋ぐ地域と世界の未来
地方企業の多くが人材不足や過疎化に悩む中、OLED青森は「ここで働きたい」と思える魅力的な企業作りを推進している。
「工場だからといって、暗くて閉鎖的な場所にはしたくない。世界最先端の技術があり、社員が誇りを持って働ける。そして、そこから生まれた『光』が世界中の家庭やオフィスを照らす。そんな未来を描いています」
同社のOLEDパネルは、その高い品質とデザイン性が評価され、すでに美術館や高級ホテルなど、特別な空間演出が求められる場所で採用が進んでいる。
「有機ELの光は、まだ進化の途中です。もっと薄く、もっと自由に、そしてもっと人間に寄り添う光になれるはずです」
福留の視線は、六ヶ所村の先にある世界を見据えている。「Aomori from the World」。世界が青森に注目し、青森から世界へ新しい価値を発信する。その架け橋となるのが、OLED青森の「やさしい光」なのだ。
