八戸と共に生きる司法書士
北の海風が吹き抜ける青森県八戸市。この街は、太平洋に面しながらも温暖な親潮と冷たい寒流が交わる独特の気候を持ち、豊かな漁業資源と共に発展してきた。かつては城下町として栄え、現在は青森県南部の経済・文化の中心地でもある。
そんな八戸の中心街に事務所を構えるのが、司法書士法人わかば法務事務所だ。そこに司法書士として相続や登記、裁判業務を手がける男がいる。久保隆明。司法書士法人わかば法務事務所の代表として、彼はこの街に暮らす人々の「困った」に向き合い続けている。
司法書士とは何か。ただ登記の手続きをするだけの職業ではない。相続にまつわる人々の葛藤、債務整理における人生の再出発、企業経営の基盤となる法人登記。人の生活に根を張り、時には見えない傷を癒し、時には厳しい現実と向き合う。そのすべてを、久保隆明は八戸の地でやってきた。
覚悟
久保が司法書士という道を選んだ背景には、父の存在がある。父もまた司法書士だった。しかし、彼が学生時代にこの職業に強く憧れたわけではなかった。「サラリーマンになるよりは、自分の力で生きる道を選びたかったんです。」この強い意志が、彼を資格試験の世界へと向かわせた。司法書士試験の合格率は約2%。挑戦者の98%が敗れ去るこの厳しい世界。2002年、そこで彼は5度目の挑戦で合格を果たす。その後、東京で修行を積むが、2003年に父の病を知り八戸に戻る決意をすることとなる。
翌2004年、父が他界。事務所を継ぐことになった。
だが、引き継ぎは容易ではなかった。父の死は突然であり、久保はまだ実務経験も浅かった。事務所には父が受け持っていた依頼者がいた。長年の信頼で築かれた顧客がいた。しかし、その多くが、久保が都内で扱っていたものとは全く異なる分野の依頼内容ばかり。そして経営者としての経験もなければ、司法書士として独立する覚悟も彼はまだできていなかった。
迷った。このまま続けるべきか、それとも一度手放すべきか。しかし、答えはすぐに出た。次々に舞い込む案件、相談に訪れる依頼者たち。彼らは、亡き父が築いた信頼のもとに、変わらぬ支援を求めていた。
「辞めるわけにはいかない。」久保はそう決意し、未熟なまま司法書士としての実務に飛び込んだ。最初の数年間は苦しい日々が続いた。父が残した案件を処理しながら、新たな相談にも対応しなければならない。手続きの流れすら完全に把握できていない状態で、書類を必死に調べながら、一つずつ業務をこなしていった。顧客は待ってくれない。相続は遅れれば遅れるほど問題がこじれる。法律の知識だけではなく、依頼者の感情にも寄り添いながら、最善の解決策を探す。その過程で、彼は学んだ。「司法書士とはただ法を扱う仕事ではないんです。人と人をつなぐ仕事です。」
そして2009年、個人事務所から法人化し司法書士法人わかば法務事務所を設立。共同代表だった水谷秀樹も後に他界し、久保が単独で代表を務めることになる。水谷事務所の歴史を含めれば、この事務所は八戸の地で68年以上続く司法書士事務所だ。積み重ねられた信頼と歴史の上に、彼は新たな時代を築こうとしている。
相続は未来を形づくる選択の瞬間
「相続は誰にとっても身近な法律問題である」
人が亡くなると、その人が持っていた財産は遺された人々に引き継がれる。だが、相続というものは単に財産の移転ではない。そこには感情が絡む。愛情もあれば、わだかまりもまた然り。兄弟同士の争い、親戚との絶縁…久保はこれまで、相続をめぐる数えきれないドラマを見てきた。
「価値の低い財産の分け方によって、価値の高い家族の絆が壊れることがある。それが、何よりも残念なんです。」そう語る久保は、司法書士としての職務以上に、人と人との関係性に重きを置いている。
相続は単なる法律手続きではない。それは家族の歴史を確認する作業であり、未来を形作る選択の瞬間でもある。ひとつの不動産や財産がきっかけで、長年の家族の絆が失われることがある。逆に、適切な準備と調整を行えば、相続は家族のつながりを強化し、次世代へと安心を届けることもできる。久保は、この「人間関係のバランスを守る」という視点を大切にしながら、相談者一人ひとりと向き合う。司法書士としての役割は、単に法を解釈し適用することではなく、依頼者の心情に寄り添い、最も円満な解決を導くことにある。
法を使い人をつなぐ
シェイクスピア『ヴェニスの商人』のポーシャ。彼女は法律を知り尽くし、機転を利かせて人々の運命を変えた。シャイロックが厳密な法の適用を求めたとき、ポーシャは「法は人間のためにある」と示し、情と理のバランスをとった人物として描かれている。
久保隆明もまた、法律と人間の間で生きる者だ。法的な解決だけを求めるなら、それは単なる書類の処理にすぎない。しかし、そこに人間関係が絡む以上、彼の役割は「法を使って人と人をつなぐ」ことにある。
これからも久保隆明は、八戸の街で、人々の人生に寄り添い続けるだろう。法を知り、そして人を知る者として。