世界へ挑む弘前の料理人

オステリアエノテカ ダ・サスィーノ オーナーシェフ 笹森 通彰 1973年、青森県弘前市生まれ。仙台のイタリア料理店で料理の世界に魅了され、3年間の修業を経て腕を磨く。その後都内の有名店で3年間の経験を積み、2001年に念願のイタリアへ渡る。ミシュラン二つ星レストラン「ドラーダ」や「アルノルフォ」など名店で2年半にわたり修業。2003年、青森県弘前市で「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」をオープン。地元の農家や漁師と連携し、青森の豊かな自然が育む食材を最大限に活かした料理を追求。野菜や生ハム、チーズ、ワインまで自ら手がける姿勢が高く評価され、「情熱大陸」出演など、その挑戦は国内外で広く注目されている。2020年には「日本ワイナリーアワード コニサーズワイナリー」に選出、2024年には農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ゴールド賞受賞など、その活動は常に進化を続けている。 https://dasasino.com/

青森を愛する食の探求者

青森県弘前市の静かな街並みに佇むレストラン「オステリア エノテカ ダ サスィーノ」。そのオーナーシェフである笹森通彰氏は、料理人としての使命感と地元青森への深い愛情を胸に、この地で新たな食文化を創造し続けている。その生き様は、地域に根ざしつつも世界へ目を向けた姿勢を体現している。まるで日本が誇る俳人・松尾芭蕉が「奥の細道」を旅したように、自らの足で青森の食材と向き合い、その魅力を探求しているようだ。

 

イタリアで培った料理の哲学

笹森氏の旅は、高校卒業後から始まる。仙台のイタリア料理店でアルバイトをしていた彼は、そのまかない料理を通じて料理の面白さに目覚めたという。その後、都内の有名店での修行を経て、2001年にイタリアに渡る。ミシュラン二つ星レストラン「ドラーダ」をはじめとした名店で約2年半修行を積む中で、現地のシェフから“故郷の食材を活かすことが料理人の真髄である”という哲学を学び、それが彼の料理人生の指針となった。

2003年、彼は青森に戻り、「オステリア エノテカ ダ サスィーノ」をオープンした。ここで提供される料理は、青森県産の新鮮な魚介類や野菜を主役に据えたイタリアン。単なる郷土食材の使用にとどまらず、イタリアの伝統的な調理法と組み合わせることで、ここでしか味わえない独自のメニューを生み出している。その一つが、地元の漁師から紹介された市場に出回らない珍しい魚を使ったパスタだ。この料理は、笹森氏の創意工夫と挑戦心の象徴として、地元のみならず遠方から訪れる客にも愛されている。「ちなみにサスィーノは、イタリアで働いてた時のササモリのニックネームです」と笹森氏は朗らかに語った。

 

食材への敬意を最大限に

2014年には「JAPAN CHEESE AWARD」で部門別金賞・銀賞をダブル受賞し、農水省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズクラスにも選出。2015年にはフランス国際チーズコンクールで部門別銅賞を受賞し、以降も「JAPAN CHEESE AWARD」や「ジャパンシードルアワード」「ジャパンワインチャレンジ」などで数々の賞を獲得。2019年には「料理マスターズシルバークラス」を受賞、2020年には「日本ワイナリーアワード コニサーズワイナリー」に選出されるなど、笹森氏の活動は常に進化を続けている。

輝かしい受賞歴を持つ笹森氏の料理哲学の根底には、食材への敬意がある。それは、食材が持つ個性を最大限に引き出すことを目的とした彼の調理への姿勢からも明らかだ。たとえば、冬の寒さを利用して甘みを引き出した雪中にんじんを用いたスープが大きな話題を呼んだこともある。これらの試みは、地元の生産者との深い連携なしには成り立たない。笹森氏は農家や漁師を頻繁に訪れ、食材の質や育成状況を直接確認するだけでなく、生産者の挑戦を支える役割も担っている。

さらに、笹森氏は飲食業の枠を超えた活動にも力を入れている。自らブドウ畑を所有し、ワインの製造に取り組む姿勢は、まさに彼の探究心の表れである。その情熱は、地元弘前市をワイン産地として認定させる行政への働きかけにまで及び、地域全体の活性化にも貢献している。また、若手生産者や地元の学校と協力し、持続可能な農業や漁業を推進することで、次世代を育てる活動にも注力している。

 

青森を「食の聖地」へ

笹森氏が語る未来像は、青森を「食の聖地」として世界に認知させることだ。そのために、海外のシェフや食の専門家を招いたイベントの開催や、地域全体でのプロジェクト推進を目指している。また、地元の若者たちに対しては、自らの経験をもとに「外の世界を知ることの重要性」を訴え、視野を広げることの価値を伝えている。彼の言葉は、青森の未来を担う次世代への熱いメッセージであり、同時に自身の経験から生まれたリアルなアドバイスでもある。イタリアの土壌や気候を最大限に活かし、国際的な評価を得たたことでイタリアのワイン文化を再興したガヤ氏のように、彼もまた青森の風土と食材の特性を活かしながら、独自の料理とワインで青森の食文化を国内外に発信し、まさに世界に挑み続けている。

今や「オステリア エノテカ ダ サスィーノ」は地元青森を訪れる観光客だけでなく、国内外から多くの食通たちが足を運ぶ名店だ。ここで修行させてほしいと頭を下げにくる若者も尽きることがない。ここには、単なる料理を超えた物語と、地元愛に裏打ちされた情熱が詰まっているのだ。

笹森通彰オーナーは、青森という地方都市から世界に向けて、その価値を発信する旗手として輝きを放っている。彼の物語は、地域と世界を繋ぐ可能性を秘めた一つの成功例として、これからも多くの人々に希望とインスピレーションを与え続けるだろう。