自ら感じたものこそ信じろ

株式会社テクニカル 営業業務部長 小島保志 約15年のCDショップ勤務を経て、2007年に株式会社クロビットジャパンに入社、転身先の光学業界という未知の領域で設計を学ぶ。2009年に親会社の株式会社テクニカルに移籍。2024年には営業業務部長として、設計から顧客対応までを担い、最前線で活躍している。
生産管理部長 三上佳祐 高校卒業後、2007年に株式会社テクニカルに入社。加工現場で数々の失敗を経験しながら成長。現在は生産管理部長として、製造工程全体を統括し、技術と経験を次世代に伝える役割を担っている。 https://technical-prisms.com/

光をあやつる弘前の技術集団

プリズムは、ただの透明なガラス片ではない。むしろ、それは光が内側で秘密裏に語り合う、小さな宇宙そのものだ。白い光がその角度の狭間に忍び込むと、プリズム内部で幾何学的な光の舞が始まる。

青森県弘前市。津軽の風は、まるで凍えるほどの冷たさを秘めた刃のように、無情にもリンゴ畑を揺らし、白銀の世界と化した街を包み込む。株式会社テクニカルは、こうした土地に根ざしながら、光学部品製造の最前線でプリズムや光学平面基板の微細な加工を追求している。「測定できるから、加工ができる」という哲学を掲げ、世界中の研究機関や最先端機器に向けて製品を供給。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発促進事業への採択や、経済産業省による地域未来牽引企業の選定など、その技術力は国内外で高く評価されている。弘前という静かな土地に根を下ろしながらも、同社の製品は世界各地で正確さと美しさを発揮している。

細部への妥協を許さない精度へのこだわりが、テクニカルを支えるエンジニアたちの原動力だ。その中心に立つのが、小島保志と三上佳祐。ふたりはテクニカルの技術力を支える根幹であり、同社の精神を体現している存在だ。

 

設計に目覚めた男

小島保志の歩みは、かつてCDショップで音楽に身を委ねていたところから一変し、光学の世界に足を踏み入れたことに始まる。最初は全くの異分野で戸惑いもあったが、「音楽で感じる創造の歓び」に通じるものを図面の作成や光の性質を計算するプロセスの中に見出した。駆け出しの頃、初めて自らの手で設計した製品を手にしたときの確かな手応えが、彼の人生を大きく方向づけた。

いまや小島は、技術営業の要として、設計図と顧客の要望を結びつける役割を担っている。顧客の声に耳を傾け、そこから得たヒントを設計に落とし込み、改良へとつなげる。彼の手から生み出される光学部品は、最先端研究や検査装置に組み込まれ、技術の未来を照らしている。

 

運命が生み出した生産管理の鬼

三上佳祐は、高校卒業直前に何気なく目にした「テクニカル」という社名をきっかけに入社を決意した。最初の数年間、数々の失敗と向き合うことになる三上。計算ミスや確認漏れ、手順の見落とし…彼の作業は失敗の連続であったが、そのたびに先輩たちは辛抱強く、そして時には厳しく、彼に「なぜ確認が必要なのか」そして「どこにこだわるべきか」を至極丁寧に教えた。その教えが、彼の中に確かな光を灯し、やがて彼は生産管理部長として、テクニカルの要とも言える製造現場全体を統括するまでに成長する。

彼は、自らの過去の苦い経験を胸に、新人たちが同じ道を歩まぬよう、細やかに指導し続ける。そして生産工程の一つひとつに魂を込め、精度への妥協を許さず、常に「どうすればより良いものが生まれるか」を問い続ける。研究機関向けの高精度部品を手がけるだけでなく、「テクニカルの技術」が広く人々の暮らしに活かされる未来を目指し、その実現へ向けて日々努力を重ねている。

 

テクニカルは知の格闘場

古代ギリシャの哲学者プラトンは、アテナイの片隅に「アカデメイア」と呼ばれる学びの場を築いた。そこは、理性と情熱が交錯し、知識を深めるための自由な議論が絶え間なく行われる場所であった。プラトンのアカデメイアは、単なる知識の蓄積を超え、思考そのものを研ぎ澄ます実践の場であり、後の西洋思想の礎となった。

テクニカルでも各専門知識が共有され、新たな技術やアイデアを生み出す試行錯誤が日夜続いている。小島保志が図面と向き合いながら未来を描く一方で、三上佳祐は生産ラインを細部まで点検し、品質向上につなげる。彼らは、数字に基づく厳密な計測と、新しい発想を融合させて製品を生み出す誇り高きエンジニアだ。

小島はこう言う。「最初は何もわからないし、図面を描いたこともなかった。でも少しずつわかってきたのは、わからないことのなかにこそ宝があるってことなんです。」三上はこう続ける。「僕は流れに任せた結果、ここにいる。でもその流れは、自分の手で変えていくこともできる。なぜ確認が必要なのかを自問する、新人に教える、それが次の世代を育てることにつながります。」

小島と三上が歩んできた道は、偶然と喜びと苦悩、そして絶え間ない挑戦の連続だったかもしれない。転身の勇気、失敗を乗り越える根気、そして何よりも、問い続ける情熱。彼らの姿は、時代を超えて、あらゆる分野のスペシャリストたちに共通する普遍的なテーマを体現している。

計測と加工、知と技の融合は、単なる仕事の域を超え、ひとつの思想、ひとつの生き方である。小島と三上、そしてテクニカルの社員たちは、これからも弘前で、まばゆい光を放つ製品をつくり続ける。光学の技術を武器に、新しい扉を開けようとしている。そこには、苦境を跳ね返すエネルギーと、未来を創るという確信がある。